演劇大学生のあれやこれ

演劇を勉強する大学生です。

熱い夏と中毒性ーミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズン全国大会青学vs氷帝

 

『ミュージカル「テニスの王子様」3rdシーズン全国大会青学vs氷帝』を観た。今回の試合は以前、関東大会で死闘を繰り広げた氷帝学園との試合だ。
ザ・王道主人公校である青春学園は、スポ根魂炸裂の熱と勝ちたいという強い意志で満ちあふれていた。それに対し、対戦校である氷帝学園は名前の通り氷のようにクールに、帝王のオーラを放つ。過去に敗北した経験から「絶対に負けられない」という冷たさの中の熱さみなぎっていた。
そんな二校が繰り広げる、手に汗握るほど熱量と爽やかさが入り交じる試合は「熱い夏」という言葉が似合っていた。
幕が開くと前回の全国大会初戦、以前の氷帝学園との戦いが縦横無尽に駆け巡る姿から走馬灯のように思い出さされる。
1幕で繰り広げられた2試合はまさに「炎と氷」、スタイルの違う二人のシングルス3とアクロバットやド派手な技が炸裂するダブルス2。どちらもラリーのように軽快で、スピーディーな試合を展開した。一方2幕にかけては先ほどと違い、回想や心情、長時間のラリーが多用されており、1幕、2幕で対照的な試合運びがなされている。
回想や心情といった点ではダブルス1が印象的であった。ダブルスはパートナーとの信頼関係、友情が強くする。特に今試合のダブルス1は両校とも名ダブルス同士の試合ということもあり、相互の絆が強く感じられた。
しかし1番の見所はやはり最終試合、シングルス1。約30分間に及ぶ闘いはまさに死闘であった。ラリーは緊張感がありつつも、だらだらしてしまうもの。しかしお互い人知を超えた技を光、音等の効果で表しており迫力満点であった。そんな豪華な演出がついているのにもかかわらず、最終ラリーはとてもシンプルなものでそのギャップのためか、深く脳裏に焼き付いている。応援席もネットもなくなり、我々観客も空気と化したその場は誰も立ち入ることの許されない二人だけの世界が広がっていた。
5年前に上演された『ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン全国大会青学vs氷帝』と比べてみると、もちろん同じ試合内容、同じ勝敗であるにも関わらず全く新しいものを観ている感覚であった。パワーアップした演出、アレンジや新たに加わった曲。全てが進化しており、いくら同じ内容であっても同じ舞台は存在しないのだということを思い出させる。
同じ内容なのに、同じキャストなのに、もう一度観たくなる。年月が経てば己の価値観が変わって違う観方ができるかもしれない。前回よりもクオリティが上がっているかもしれない。そんな可能性に賭けて通ってしまう中毒性の秘めた舞台なのである。